
BtoB(Business to Business)ビジネスにおいて、新規顧客の獲得は事業成長の要です。多くの企業がWeb広告を活用する中で、Facebook広告はその高いターゲティング精度から、BtoBマーケティングの強力な一手として注目されています。
しかし、その多機能さゆえに「どのように設定すれば効果が出るのか分からない」と悩む担当者様も少なくありません。
本記事では、BtoB向けFacebook広告のターゲティングの基本から、成果を最大化するための具体的な設定方法までを体系的に解説します。
なぜ今、BtoBビジネスにFacebook広告が有効なのか?

BtoB商材は検討期間が長く、関与者も多いため、広告でのアプローチは難しいとされてきました。しかし、Facebook広告は独自の強みを活かすことで、BtoBならではの課題を乗り越え、効果的なマーケティングを可能にします。
理由1:高精度なターゲティングで決裁者に届く
Facebookの大きな強みは、登録されたプロフィール情報に基づいた詳細なターゲティングです。
企業名、役職、業種、従業員数といったビジネス関連のデータで絞り込めるため、アプローチしたい企業の決裁者や担当者様へピンポイントに広告を配信できます。これにより、無駄な広告費を削減し、効率的に見込み客へアプローチすることが可能です。
理由2:ビジネス関連の情報収集プラットフォームとして定着
今日、ビジネスパーソンも情報収集のためにSNSを積極的に利用しています。Facebookは実名登録制であるため、信頼性の高い情報交換の場として活用される傾向にあります。
業界の最新ニュースや専門家の意見などをフォローする中で、自社の課題解決に繋がる広告が表示されれば、自然な形で製品やサービスに興味を持ってもらうきっかけになります。
理由3:潜在層へのアプローチで新たな顧客を発掘
検索広告ではアプローチが難しい、自社の課題をまだ明確に認識していない「潜在層」にリーチできるのもFacebook広告のメリットです。
例えば、特定の業界や職種の人々が関心を持ちそうなトピックに関する有益な情報(ホワイトペーパーやセミナー)を広告として提供することで、将来の顧客となりうる層との接点を作り出し、育成していくことが可能です。
BtoBターゲティングの基本|3つのオーディエンスを理解する

Facebook広告のターゲティングは、大きく分けて「コアオーディエンス」「カスタムオーディエンス」「類似オーディエンス」の3種類です。これらの特徴を理解し、使い分けることがBtoB広告成功の第一歩です。
コアオーディエンス:属性や興味・関心で定義する
コアオーディエンスは、Facebookが保有するユーザーデータ(年齢、性別、地域、興味・関心、役職など)を基に、広告を配信したいターゲット層を定義する方法です。BtoBでは、特に「利用者層」に含まれる役職や業種、企業規模などの項目が重要になります。まだ自社の顧客データが少ない段階でも、この機能を使えば精度の高いターゲティングが可能です。
カスタムオーディエンス:自社データで既存顧客や見込み客に配信
カスタムオーディエンスは、自社で保有している顧客リスト(メールアドレスや電話番号)や、ウェブサイトへの訪問履歴、アプリの利用状況といったデータを活用して、特定のユーザーグループに広告を配信する機能です。既存のお客様へのアップセルや、一度サイトを訪れたものの離脱してしまったユーザーへの再アプローチ(リターゲティング)など、顧客の検討フェーズに合わせたきめ細やかなコミュニケーションを実現します。
類似オーディエンス:優良顧客と似た傾向のユーザーに拡張
類似オーディエンスは、既存の優良顧客やコンバージョンしたユーザーなど、質の高いカスタムオーディエンスを基に、Facebook上で似たような行動や属性を持つユーザーを探し出して広告を配信する機能です。これにより、自社のターゲットとなりうる可能性の高い、新たな潜在層へ効率的にアプローチを拡大できます。BtoBビジネスのスケールアップを目指す上で非常に強力な手法です。
【実践】BtoB向けコアオーディエンスのターゲティング設定術

コアオーディエンスは、BtoBターゲティングの根幹をなす機能です。ここでは、特に重要となる3つのカテゴリーの設定方法とコツを解説します。
「利用者層」で役職・業種・企業規模を狙い撃ちにする方法
BtoB広告で最も活用すべきが「利用者層」の詳細ターゲット設定です。ここから「仕事」のカテゴリーを選択すると、「役職」「業種」「勤務先」といった項目でターゲットを絞り込めます。例えば、「マーケティング部長」や「IT業界」「従業員数101〜500人」のように指定することで、自社サービスのメインターゲットとなる企業のキーパーソンに直接広告を届けることが可能になります。
「興味・関心」で関連キーワードを指定し潜在層にアプローチ
ターゲットが関心を持ちそうなビジネストレンド、競合製品、業界メディアなどを「興味・関心」で指定することで、潜在的なニーズを持つ層にアプローチできます。例えば、SaaS企業であれば「デジタルトランスフォーメーション」や「Salesforce」といったキーワードに関心のあるユーザーをターゲットに設定することで、自社サービスへの関心を喚起できる可能性があります。
「行動」データで購買意欲の高いユーザーを捉える
「行動」カテゴリーでは、Facebookページ管理者や、特定のビジネスツールを利用しているユーザーなどをターゲットに設定できます。例えば、「Facebookページの管理者」は企業のSNS運用担当者である可能性が高いため、マーケティング支援ツールなどを販売する際に有効なターゲットとなり得ます。
ユーザーのオンライン上での具体的なアクションに基づいているため、比較的購買意欲の高い層にアプローチできるのが特徴です。
成果を最大化するカスタムオーディエンスの戦略的活用法

カスタムオーディエンスを戦略的に活用することで、広告の費用対効果を劇的に高めることができます。顧客の状況に合わせたアプローチが鍵となります。
既存顧客リストを元にしたアップセル・クロスセル戦略
すでに自社のサービスを利用しているお客様のリストをアップロードし、カスタムオーディエンスを作成します。このリストに対して、上位プランへのアップグレードや、関連サービスの追加契約(クロスセル)を促す広告を配信します。既存顧客はすでに自社への信頼があるため、新規顧客にアプローチするよりも低いコストで成果に繋がりやすい傾向があります。
ウェブサイト訪問者へのリターゲティングで検討度を高める
ウェブサイトにFacebookピクセル(計測タグ)を設置することで、サイトを訪れたユーザーを追跡し、広告を再配信するリターゲティングが可能になります。例えば、「料金ページは見たが、問い合わせには至らなかった」ユーザーに対して、導入事例や割引キャンペーンの広告を見せることで、再検討を促し、コンバージョンへと後押しすることができます。
動画視聴者などエンゲージメントの高いユーザーを育成する
Facebook上で公開した製品紹介動画やセミナー動画を一定時間以上視聴したユーザーは、自社への関心度が高い見込み客と言えます。これらのユーザーをソースとしてカスタムオーディエンスを作成し、より具体的な製品資料のダウンロードや、個別相談会への誘導といった、次のアクションを促す広告を配信することで、効率的に見込み客を育成(リードナーチャリング)できます。
失敗しないためのBtoB広告運用のコツ

精度の高いターゲティングも、運用の仕方を間違えると効果は半減してしまいます。最後に、BtoBのFacebook広告で失敗しないための重要なコツを3つ紹介します。
リード獲得広告を効果的に活用し、ユーザーの負担を軽減する
リード獲得広告は、ユーザーがFacebook上でフォーム入力を完結できる広告フォーマットです。ウェブサイトに遷移させる手間がないため、ユーザーの離脱を防ぎ、コンバージョン率の向上が期待できます。特に、ホワイトペーパーのダウンロードやセミナー申し込みなど、BtoBで多用される施策と相性が良く、効率的にリード情報を収集することが可能です。
クリエイティブは「自分ごと化」できる課題解決型コンテンツが鍵
BtoB広告のクリエイティブ(広告の画像や動画、テキスト)では、単に製品の機能を羅列するのではなく、ターゲットが抱える具体的な課題を提示し、それをどう解決できるのかを明確に示すことが重要です。「うちの会社のことだ」とユーザーに感じてもらえるような、共感を呼ぶストーリーやデータを用いることで、広告への関心を高め、クリックに繋げることができます。
A/Bテストを繰り返し、最適なターゲティング設定を見つけ出す
「役職で絞るべきか、興味・関心で広げるべきか」「どの顧客リストを基にした類似オーディエンスが最も効果的か」など、最適なターゲティング設定は商材やターゲットによって異なります。複数のターゲティングパターンやクリエイティブで広告セットを作成し、少額の予算でA/Bテストを繰り返しましょう。その結果を分析し、最も成果の高い組み合わせを見つけ出して最適化していくことが、継続的な成功への近道です。
Facebook広告の成功事例
楽天グループ株式会社:「楽天スマートペイ」加盟店の見込み客獲得数が47%増加
楽天は「楽天スマートペイ」加盟店開拓でFacebookのリード広告を活用し、大きな成果を上げています。Facebookのリード広告は、広告上でフォーム入力が可能でサイト遷移が不要なため、登録ハードルが下がります。決済手数料の明記やボタン表記を「登録する」に変更するなど細やかな運用改善を実施した結果、従来のFacebook広告と比べ見込み客獲得数が47%増加、DSP経由広告と比較して獲得単価は4分の1に削減することに成功しています。
※出典:日経クロストレンド「楽天がBtoB事業でFacebookのリード広告活用、見込み客の獲得数が47%増加」
株式会社ネットプロテクションズ:BtoB後払い決済サービス「NP掛け払い」で勝ちパターンを発見
BtoB向け後払い決済サービスの事例。静止画のFacebook広告に加えて動画広告も取り入れ、「運用型クリエイティブ」と呼ばれる手法で複数パターンの広告クリエイティブをテストしながら成果最大化を図りました。訴求メッセージの軸やデザイン要素を変えて検証を重ねた結果、BtoB領域でも動画広告が有効であることを確認し、最も成果の高いクリエイティブのパターンを発見して成果向上につなげています。
※出典:MarkeZine「【3社の検証事例を公開】広告で成果が出ない時、脱出の近道は「運用型クリエイティブ」にある!」
まとめ

本記事では、BtoBビジネスにおけるFacebook広告のターゲティングに焦点を当て、その有効性から具体的な設定方法、運用のコツまでを解説しました。
Facebook広告の強みは、役職や業種で決裁者に直接アプローチできる高精度なターゲティングにあります。
- コアオーディエンスで市場を定義し
- カスタムオーディエンスで既存顧客や見込み客との関係を深め
- 類似オーディエンスで新たな潜在層へとリーチを拡大する
この3つのオーディエンスを戦略的に使い分けることが成功の鍵です。自社の顧客データを活用し、ターゲットに響くメッセージを届けることで、広告の費用対効果は最大化されます。
リード獲得広告の活用や、継続的なA/Bテストといった運用面の工夫も組み合わせ、BtoBビジネスを加速させましょう。