BtoBオウンドメディアの立ち上げ方|成功事例から学ぶ計画・費用・目的設定の手順

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BtoBビジネスにおいて、顧客が購買プロセスの大半をオンラインで完結させる現代、オウンドメディアは単なる情報発信ツールではありません。顧客との継続的な関係を築き、専門知識を提供することで信頼を獲得し、最終的にビジネス成長を加速させるための戦略的資産です。

本記事では、BtoBオウンドメディアの立ち上げを成功に導くための具体的な計画、目的設定、費用、そして成功事例までを網羅的に解説します。

なぜ今BtoB企業にオウンドメディアが必要なのか?

現代のBtoBの顧客は、営業担当者と会う前に、自らオンラインで徹底的な情報収集を行います。

製品やサービスの仕様、価格、導入事例、そして企業の信頼性まで、あらゆる情報を比較検討しています。このような購買行動の変化に対応し、顧客との最初の接点を持ち、継続的な関係を築く上で、オウンドメディアの役割は極めて重要です。

自社の専門知識やノウハウを発信することで、潜在的な顧客の課題解決に貢献し、信頼できるパートナーとしての地位を確立できます。

失敗しないために最も重要!オウンドメディアの目的を明確にする

立ち上げの成功は、目的設定で9割決まると言っても過言ではありません。目的が曖昧なままでは、コンテンツの方向性がぶれ、投下したリソースが無駄になり、期待する成果は得られません。「なんとなくリードが取れそうだから」といった漠然とした理由で始めるのではなく、自社の事業課題と結びついた明確な目的を設定することが、成功への第一歩となります。

BtoBオウンドメディアで達成できる主な目的

オウンドメディアは、様々な事業目的に貢献できる柔軟なツールです。自社が最も解決したい課題は何かを明確にし、それに合った目的を設定しましょう。

  • リード獲得(見込み客の創出):最も多くの企業が掲げる目的です。役立つ情報を提供し、ホワイトペーパーのダウンロードやセミナー申し込みなどを通じて、将来の顧客となるリード情報を獲得します。
  • ブランディング(専門家としての地位確立):特定の領域に関する専門的なコンテンツを発信し続けることで、「この分野ならこの会社」という第一想起を獲得し、業界内でのブランドイメージを向上させます。
  • 顧客育成(ナーチャリング):既存の見込み客や顧客に対し、継続的に有益な情報を提供することで、製品・サービスへの理解を深め、より良い関係を築き、アップセルやクロスセルに繋げます。
  • 採用強化:企業の文化やビジョン、働く社員の様子などを発信することで、求職者への魅力づけを行い、採用活動を有利に進めます。

BtoBオウンドメディア立ち上げの具体的な計画【5ステップ】

目的を明確にしたら、次はいよいよ具体的な立ち上げ計画です。以下の5つのステップに沿って進めることで、戦略的かつ着実にオウンドメディアを立ち上げることができます。闇雲に始めるのではなく、一つひとつのステップを丁寧に進めることが、遠回りのようでいて、成功への最短ルートです。

ステップ1:目的から逆算したKGI・KPIを設定する

目的というゴール(KGI:重要目標達成指標)を達成するために、具体的な数値目標(KPI:重要業績評価指標)を設定します。KPIは、活動の進捗を測り、改善アクションに繋げるための重要な羅針盤です。

  • 目的がリード獲得の場合:KGI:月間リード獲得数KPI:月間PV数、記事からのCTAクリック率、フォーム完了率
  • 目的がブランディングの場合:KGI:特定キーワードでの検索順位1位獲得数KPI:指名検索数、被リンク獲得数、SNSでのサイテーション数

ステップ2:ターゲットとなるペルソナとカスタマージャーニーを設計する

「誰に」「どのような情報」を届けるかを具体的に定義します。架空の顧客像である「ペルソナ」を、役職、業務内容、抱えている課題、情報収集の方法など、実在の人物のように詳細に設定します。そのペルソナが、自社の製品やサービスを認知し、興味を持ち、最終的に購買に至るまでの思考や感情、行動のプロセスを「カスタマージャーニーマップ」として可視化します。これにより、各段階でどのようなコンテンツが必要かが見えてきます。

ステップ3:コンテンツ戦略を策定する

ペルソナとカスタマージャーニーに基づき、メディアの骨子となるコンテンツ戦略を策定します。具体的には、ペルソナが検索するであろうキーワードを洗い出し、SEO(検索エンジン最適化)を意識したキーワード戦略を立てます。また、カスタマージャーニーの各段階に合わせて、ブログ記事、導入事例、調査レポート、ホワイトペーパー、動画など、最適なコンテンツの形式を計画に盛り込みます。

ステップ4:制作・運用体制を構築する

高品質なコンテンツを継続的に発信していくための体制を構築します。プロジェクト全体の責任者、コンテンツの企画・編集者、ライター、デザイナーなど、必要な役割を明確にします。

これらの役割をすべて社内の人材でまかなう「内製」か、専門知識を持つ外部の制作会社やフリーランスに依頼する「外注」か、あるいは両方を組み合わせた「ハイブリッド型」か、自社の予算やリソース、ノウハウの状況を考慮して最適な体制を選択します。

ステップ5:CMSの選定とサイト構築

コンテンツを効率的に作成、管理、公開するための基盤となるCMS(コンテンツ管理システム)を選定します。世界的にシェアが高いWordPressは、その柔軟性や豊富なプラグインから多くの企業で採用されていますが、他にも様々なCMSが存在します。

SEOへの対応力、操作のしやすさ、セキュリティ、サポート体制などを比較検討し、自社の目的や運用体制に最も合ったツールを選ぶことが重要です。CMSが決まったら、サイトのデザインや構造を設計し、実際のサイトを構築していきます。

【内製vs外注】BtoBオウンドメディアの立ち上げ・運用にかかる費用

オウンドメディアの費用は、立ち上げフェーズと運用フェーズ、そして内製するか外注するかで大きく変動します。予算を計画する際は、初期費用だけでなく、継続的に発生する運用費用も考慮に入れることが不可欠です。

サイト構築にかかる初期費用

メディアの「器」を作るための費用です。デザインや機能によって金額は大きく変わります。

内製の場合

数万円〜サーバー代やドメイン代、有料のWordPressテーマやプラグインの購入費用が主です。デザインや実装をすべて自社で行うため、制作会社への支払い(イニシャルコスト)は抑えられますが、その分、担当者の人件費と専門スキルが必要になります。

外注の場合

50万円〜300万円以上戦略設計、デザイン、実装などを制作会社に依頼する場合の費用です。オリジナルのデザインや複雑な機能を求めると、費用は高額になる傾向があります。テンプレートデザインを活用すれば、費用を抑えることも可能です。

コンテンツ制作・運用にかかる月額費用

メディアを「育てる」ための費用です。コンテンツの品質と量が、メディアの成長を左右します。

内製の場合

人件費のみコンテンツの企画、執筆、編集、分析などをすべて社内で行うため、外部への支払いは発生しません。ただし、担当者の工数がかかること、そしてSEOやライティングの専門知識を持つ人材が必要になる点が課題です。

外注の場合

20万円〜100万円以上記事制作を外部のライターや編集プロダクションに依頼する場合の費用です。記事の専門性や文字数、依頼する本数によって月額費用は変動します。SEOコンサルティングや効果測定レポートなどを依頼する場合は、さらに費用が加算されます。

【目的別】BtoBオウンドメディアの成功事例から学ぶ

ここでは、実際のBtoB企業がどのようにオウンドメディアを成功させているのか、目的別に事例を紹介し、その成功要因を分析します。自社の目的に近い事例を参考に、戦略のヒントを得ましょう。

事例1:リード獲得を成功させたメディアの戦略「ferret」

Webマーケティングメディア「ferret」は、株式会社ベーシックが運営しています。Webマーケティングに関するノウハウ記事を幅広く提供し、記事内に設置したCTAから、自社ツール「ferret One」の紹介や、マーケティングに役立つ資料ダウンロードへと誘導することで、質の高いリードを大量に獲得しています。読者の悩みに直接応える質の高いコンテンツと、自然なリード獲得導線の設計が成功の鍵です。

事例2:独自のブランディングを確立したメディアの戦略「サイボウズ式」

グループウェアで知られるサイボウズ株式会社が運営する「サイボウズ式」は、「新しい価値を生み出すチームのメディア」をコンセプトに、働き方や組織論に関する深い洞察を発信しています。直接的な製品紹介は控えめにし、社会や組織の課題に切り込むことで、多くの読者からの共感を獲得。「サイボウズ」という企業の思想や価値観を伝え、独自のブランドイメージを確立することに成功しています。

事例3:採用強化に貢献したメディアの戦略「メルカン」

フリマアプリで有名な株式会社メルカリが運営する「メルカン」は、メルカリの「人」と「カルチャー」を伝えることを目的としたオウンドメディアです。社員インタビューや社内イベントのレポート、制度の裏側などを発信することで、メルカリで働くことのリアルな魅力を伝えています。これにより、企業の透明性や文化への理解を深め、カルチャーに共感する優秀な人材の採用に繋げています。

まとめ:BtoBオウンドメディアは中長期的な視点で育てる戦略的資産

BtoBオウンドメディアの立ち上げは、すぐに結果が出る短期的な施策ではありません。顧客の課題に寄り添う質の高いコンテンツを継続的に発信し、時間をかけて信頼を積み重ねていく、中長期的な視点が不可欠です。

それは、一度育て上げれば、広告費をかけずとも安定的に見込み客を惹きつけ、企業の思想や価値観を伝え続けることができる、強力な「戦略的資産」となります。

本記事で解説した「目的設定」「計画」「費用」「事例」を参考に、ぜひ貴社のビジネスを未来へ向かって加速させる、価値あるオウンドメディアの立ち上げに挑戦してください。