BtoBコンテンツ失敗の根本原因:「戦略以前」を解決する9つのチェックリスト

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「時間とコストをかけてコンテンツを制作しているのに、一向に商談に繋がらない…」

「上司からは『で、結局いくら儲かったの?』と詰められ、PV数やセッション数を報告するのが精一杯…」

もし、あなたがこのような悩みを抱えているBtoBマーケティング担当者なら、その根本原因は、個別の「戦略」や「ノウハウ」以前の、もっと根深い部分にあるのかもしれません。

この記事では、多くの企業が陥りがちな失敗の本質を、少し違う角度から解き明かします。そして、あなたのコンテンツマーケティングを、ただの「コスト」から「売上を生む投資」へと変えるための、具体的なアクションプランを提案します。

なぜBtoBコンテンツマーケティングは失敗するのか?その本質的な原因とは

BtoBコンテンツマーケティングがうまくいかない…と悩む方の多くは、「戦略がない」「ネタがない」「リソースがない」といった課題を思い浮かべるかもしれません。でも、実はそれらは表面的な問題に過ぎないのです。

名著『良い戦略、悪い戦略』でも指摘されているように、多くの組織が陥ってしまうのは、「戦略がない」ことよりも、目標と目的を取り違えた「悪い戦略」を立ててしまうことです。失敗の根本原因、その9割は、この「悪い戦略」の典型ともいえる「目的が形骸化してしまう」こと、そして、それに伴う「成果に無関心になってしまう」こと。この2つに集約されると言っても過言ではありません。

「なぜ戦略を立てられないの?」――それは、コンテンツマーケティングで「何を達成したいのか」という一番大切な目的(=事業への貢献)が、チームの共通認識になっていないからです。

「なぜ続けられないの?」――それは、作ったコンテンツが「どれだけ会社の売上に貢献しているのか」という成果を、誰も気にしなくなっているからです。

その結果、「コンテンツを作ること」自体がゴールになってしまい、売上や事業の成長には繋がらない、いわば“社内向けのブログ”をただただ更新し続けてしまうのです。

あなたの会社は大丈夫?コンテンツマーケティングが失敗しやすい組織、5つの共通点

成果の出ないコンテンツマーケティングには、実は組織としての共通点が隠されています。あなたの会社が、これからお話しする5つの特徴に当てはまっていないか、少しだけ立ち止まって確認してみてください。

1. 短期的な成果を求めすぎてしまう

「コンテンツマーケティングで、すぐに結果を出そう」

この考えから始まるプロジェクトは、残念ながら失敗への最短ルートかもしれません。コンテンツマーケティングは、お客様との信頼関係をじっくりと育てていく、中長期的な投資です。それなのに、数ヶ月で目に見える成果が出ないからと、「やっぱり効果がない」と見切りをつけられてしまうケースが後を絶ちません。

2. 「誰に届けるか」が曖昧になっている

『ストーリーとしての競争戦略』でも語られているように、優れた戦略には「誰に、何を、どのように」という一貫したストーリーが欠かせません。

「とりあえず、うちの製品の良さを伝えるブログでも始めようか」という見切り発車は、この大切なストーリーがすっぽり抜け落ちています。「誰に」というターゲットが曖昧なままでは、誰の心にも響かない、当たり障りのないコンテンツの山を築くだけになってしまいます。

3. コンテンツの「質」より「安さ」を優先する

「とにかく安く、たくさん記事を作ってほしい」

コストはもちろん重要です。しかし、それを優先するあまりコンテンツの品質を軽視すれば、会社の信頼を損なうという、もっと大きなコストを支払うことになります。専門知識の浅いライターが書いた表面的な記事は、読者をがっかりさせるだけでなく、大切なブランドイメージまで傷つけてしまいかねません。

4. 担当者が孤独な戦いを強いられている

コンテンツマーケティング担当者の多くが、他の仕事と兼任しています。限られた時間で、戦略から記事作り、効果測定までをたった一人で抱え込み、いつの間にか疲れ果ててしまう…。そして、その担当者が異動や退職をすれば、全てのノウハウが失われ、施策は完全に止まってしまう。これは、非常によくある話であり、組織にとって隠れた大きなリスクです。

5. 作ったコンテンツの「その後」を誰も見ていない

『データ・ドリブン・マーケティング』という本にもあるように、「測定なくして管理なし」です。

「今月のPV数は先月より5%アップしました!」という報告だけで、本当に十分でしょうか?PVやセッション数も大切ですが、それだけを追いかけていると、マーケターの自己満足である「虚栄の指標」になってしまうかもしれません。どの記事が商談のきっかけになったのか、どの資料が質の高いお客様に届いているのか。そうした事業への貢献という視点で成果を測る仕組みがなければ、改善の方向さえ見失ってしまいます。

BtoBコンテンツマーケティングの失敗を乗り越える、9つの成功法則

では、どうすれば失敗のループから抜け出し、コンテンツマーケティングを成功に導けるのでしょうか?ここでは、戦略作りから日々の改善まで、すぐに使える9つのチェックリストをご紹介します。

《計画フェーズ》ゴールから逆算して考える

1. KGI/KPIを「売上」から逆算して考えているか?

『確率思考の戦略論』でも言われているように、戦略とは「目的を達成するための資源配分」です。まずは最終ゴール(KGI)を「年間売上〇〇円アップ」のように具体的に決め、そこから逆算して「そのために必要な商談化率はX%」「そのためには有効なリードがY件必要」といった中間目標(KPI)を定める。このゴールからの逆算思考が、全ての土台になります。

2. ターゲット顧客の「顔」が具体的に見えているか?

営業担当者に話したとき、「ああ、〇〇社の△△さんみたいな人ですね」と、すぐに顔が思い浮かぶ。そのレベルまで、ターゲットとなるお客様像(ペルソナ)を具体的にしてみましょう。どんな仕事をしていて、何に困っていて、どうやって情報を探しているのか。解像度が上がるほど、「刺さる」コンテンツの輪郭はハッキリしてきます。

3. 「内製 or 外注」をコストだけで決めていないか?

判断基準は、会社の競争力の源泉となる「コア業務」か、そうでないかです。戦略作りやお客様へのインタビューといったコア業務は自分たちで。一方で、記事の執筆やデザインといった専門性の高い業務は、信頼できる外部パートナーに任せる。この切り分けが、全体の質とスピードを大きく左右します。

《制作フェーズ》顧客の「知りたい」を形にする

4. 「会社が言いたいこと」より「お客様が知りたいこと」を優先しているか?

自社製品の素晴らしさを語る前に、まずはお客様が抱える課題にそっと寄り添い、その解決策を提示する。この「顧客視点」こそが、信頼への一番の近道です。

5. 「集客用」と「商談用」のコンテンツを使い分けているか?

どんな記事にも「お問い合わせはこちら」ボタンを置くのは、少し気が早いかもしれません。まずは課題に気づき始めた方向けの「集客用コンテンツ(ブログなど)」で広く接点を持ち、次にもっと具体的な解決策を探している方向けの「商談用コンテンツ(事例資料など)」へ。このように、お客様の気持ちの変化に合わせた段階的な導線設計が大切です。

6. 信頼できる情報(一次情報や公的データ)を添えているか?

特にBtoBでは、情報の「信頼性」が命です。主張を裏付けるために、公的機関の統計データや、業界で権威のあるメディアの記事、そして自社で行った調査結果などを積極的に活用し、「この記事は信頼できる」と感じてもらう工夫をしましょう。

《改善フェーズ》コンテンツを「資産」に育てる

7. コンテンツを「作りっぱなし」にしていないか?

一度公開した記事も、大切な資産です。定期的に成果を振り返り、情報を新しくしたり、説明を加えたり(リライト)することで、その価値はさらに高まっていきます。Google Analyticsなどのツールを眺めるだけでなく、改善サイクルを回す仕組みを作りましょう。

8. 獲得したリードを「放置」していないか?

資料をダウンロードしてくれたお客様に対して、その後何もアプローチしなければ、せっかくのご縁が途切れてしまいます。お役立ち情報をメルマガで届けたり、セミナーに招待したりと、関係を温めていく「リードナーチャリング」の視点を忘れないようにしましょう。

9. 営業チームと「定例会議」を開いているか?

名著『ザ・ゴール』にも書かれている通り、会社全体の仕事は一本の鎖のようなもの。その成果は、鎖の一番弱い輪っかの部分で決まってしまいます。マーケティングチームがどれだけ多くのリード(見込み客)を集めても、それが営業チームの求めるお客様像とズレていれば、そのリードは「売れない在庫」となり、全体の成果には繋がりません。

「最近、お客様からこんな質問をよく受けるよ」
「この資料、商談ですごく評判が良いんだ」

そんな営業チームからの生の声こそ、マーケと営業の間の壁を壊す、最高のコンテンツの種になるのです。

まとめ:コンテンツマーケティングを成功に導く、はじめの一歩

BtoBコンテンツマーケティングは、決して便利な手法ではありません。でも、正しい目的意識と戦略、そしてチームの協力があれば、これほど心強く、パワフルな「売上を作る仕組み」は他にないはずです。

最後に、9つのチェックリストをもう一度。

  1. KGI/KPIを「売上」から逆算して考えているか?
  2. ターゲット顧客の「顔」が具体的に見えているか?
  3. 「内製 or 外注」をコストだけで決めていないか?
  4. 「会社が言いたいこと」より「お客様が知りたいこと」を優先しているか?
  5. 「集客用」と「商談用」のコンテンツを使い分けているか?
  6. 信頼できる情報(一次情報や公的データ)を添えているか?
  7. コンテンツを「作りっぱなし」にしていないか?
  8. 獲得したリードを「放置」していないか?
  9. 営業チームと「定例会議」を開いているか?

明日からできる最初のステップ。それは、あなたの会社のコンテンツマーケティングの「本当の目的」は何かを、チームみんなで再確認することです。その目的が「売上への貢献」であると、全員が同じ方向を向けたとき、あなたの会社のコンテンツマーケティングは、本当の意味で成功への一歩を踏み出すことができるでしょう。