
BtoBビジネスの成長に不可欠なマーケター。しかし、「募集をかけても応募が来ない」「良い人が見つからない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。本記事では、BtoBマーケターの採用がなぜ難しいのか、その理由を深掘りするとともに、未経験者を採用して育成するための具体的なステップや、経験者採用を成功させるためのポイントを解説します。
なぜBtoBに強いマーケターは採用できないのか?考えられる5つの理由

多くの企業がBtoBマーケターの採用に苦戦しています。その背景には、単なる人材不足だけではない、構造的な理由が存在します。
理由1:需要に対し、市場にいる専門人材が圧倒的に少ない
デジタルシフトの加速により、多くのBtoB企業でマーケターの需要が急増しています。ある調査ではWebマーケターの求人倍率が約300倍に達するというデータもあり、企業間で熾烈な人材獲得競争が起きています。そもそも専門的なデジタルマーケターは絶対数が少なく、特にBtoB特有のビジネスモデルを理解した経験者はさらに希少な存在です。
理由2:求めるスキルセットが高度化・多様化している
現代のBtoBマーケティングでは、SEO、コンテンツマーケティング、Web広告、MA(マーケティングオートメーション)の運用、データ分析など、非常に幅広いスキルが求められます。これらすべてを高水準で満たす「完璧なマーケター」は市場にほとんど存在せず、企業側の理想が高すぎることが採用の障壁になっているケースも少なくありません。
理由3:企業と候補者の間で期待値のズレが生じている
企業側が求める役割や成果と、候補者が望むキャリアパス、裁量権、労働条件(年収など)との間にギャップがあるケースも頻繁に見られます。特に優秀な人材ほど自身の市場価値を理解しており、より良い条件や成長機会を求めて独立したり、副業で活躍したりする傾向があり、転職市場に出てきにくいのが実情です。
理由4:BtoB特有の複雑なビジネスモデルへの理解が必須
BtoCと異なり、BtoBは顧客の購買プロセスが長く、複数の意思決定者が関わるなど複雑です。そのため、業界知識や自社の製品・サービスに対する深い理解がなければ、効果的なマーケティング戦略を立てることができません。この専門性が、他業界からの転職や未経験者採用のハードルをさらに高くしています。
理由5:社内に採用ノウハウがなく、人材を見極められない
採用担当者がマーケティングに詳しくない場合、候補者のスキルや経験を正しく評価することが困難です。職務経歴書に書かれた実績の背景を深掘りできず、自社に必要なスキルセットを定義できないまま採用を進めてしまうと、入社後のミスマッチにつながります。結果として、ポテンシャルのある優秀な人材を見逃してしまうケースも起こりがちです。
「採用できない」を乗り越える!未経験者を採用し育成する3つのステップ

経験者の採用が難しい今、ポテンシャルのある未経験者を採用し、自社で育成する動きが注目されています。成功させるための3つのステップを見ていきましょう。
ステップ1:ポテンシャルを見極める(素養のチェックポイント)
未経験者採用では、現時点でのスキルよりも、今後の成長可能性、つまりポテンシャルを見極めることが重要です。面接では以下の3つの素養を確認しましょう。
- 論理的思考力:物事を構造的に捉え、データや事実に基づいて筋道を立てて考えられるか。「なぜそう思うのか?」を繰り返し問い、思考の深さを確認します。
- 学習意欲と素直さ:新しい知識を積極的に学び、フィードバックを素直に受け入れられるか。これまでの学習経験や、失敗から学んだエピソードなどを聞くと良いでしょう。
- コミュニケーション能力:社内外の営業担当やエンジニアなど、様々な関係者と円滑に連携できるか。複雑な事柄を分かりやすく説明する能力も重要です。
ステップ2:育成プログラムと環境を整備する
採用した人材が着実に成長できる仕組みづくりが不可欠です。
- 体系的な知識習得: まずは外部研修や書籍購入補助制度などを活用し、マーケティングの基礎知識を体系的に学ぶ機会を提供します。
- OJTによる実践: 実務を通して学べるよう、具体的で測定可能な業務と目標を設定します。定期的な1on1で進捗を確認し、フィードバックを与えることが重要です。
- メンター制度の導入: 年齢の近い先輩社員などが相談役となり、業務の悩みからキャリアの不安まで、幅広くサポートする体制を整えます。
ステップ3:スモールスタートで成功体験を積ませる
最初から大きな裁量や責任を負わせるのではなく、特定の業務やチャネルから任せ、小さな成功体験を積ませることがモチベーション維持と成長促進の鍵です。施策を実行し、結果を分析して改善する「PDCAサイクル」を数多く経験させましょう。例えば、「ブログ記事の作成と効果測定」「SNSアカウントの運用とフォロワー分析」といった形で始め、徐々に担当範囲を広げていくことで、自信とスキルを着実に育てることができます。
それでも経験者を採用したい場合に押さえるべき4つのポイント

未経験者の育成と並行して、経験者採用も継続したい企業もあるでしょう。その場合に、成功確率を高めるための4つのポイントを紹介します。
ポイント1:採用ペルソナを再定義する
「あれもこれもできるスーパーマン」を求めるのをやめ、自社の事業フェーズや課題解決に本当に必要なスキルは何かを明確にします。「必須スキル(Must)」と「歓迎スキル(Want)」を具体的に切り分け、採用のハードルを現実的なレベルに設定し直しましょう。「すべてを一人でできる人材」ではなく、「チームで成果を出せる人材」という視点も重要です。
ポイント2:採用チャネルを広げ、転職潜在層にもアプローチする
従来の求人媒体に掲載して待つだけでは、優秀な人材には出会えません。より積極的に候補者との接点を増やしましょう。
- ダイレクトリクルーティング: 企業側から候補者に直接アプローチするスカウト型のサービスを活用する。
- リファラル採用: 社員や取引先からの紹介。信頼性が高く、カルチャーマッチしやすいのが利点です。
- 業務委託・副業マッチングサービス: まずは業務委託で関わってもらい、双方の相性を見てから正社員登用を検討するという方法も有効です。
ポイント3:候補者にとって魅力的な労働条件・環境を具体的に提示する
優秀な人材を惹きつけるためには、競争力のある条件提示が不可欠です。市場価値に見合った年収はもちろん、リモートワークやフレックスタイムなどの柔軟な働き方、裁量権の大きさ、予算規模、期待する成果と達成までの期間などを具体的に伝えましょう。自社の「働きやすさ」や「成長できる環境」を言語化し、アピールすることが重要です。
ポイント4:選考プロセスを見直し、スピードを意識する
優秀な候補者は複数の企業からアプローチを受けています。選考プロセスが長引くと、他社に決まってしまう可能性が高まります。書類選考や面接の期間を短縮し、スピーディーな意思決定を心がけましょう。また、選考の場では、ケース面接などを取り入れて候補者の論理的思考力や課題解決能力を見極めたり、カジュアル面談で自社のビジョンを伝えたりすることで、入社後のミスマッチを防ぎます。
まとめ:自社に合った採用戦略でマーケティング組織を強化しよう

本記事では、BtoBマーケターの採用が難しい理由と、その解決策としての未経験者育成、そして経験者採用のポイントを解説しました。
優秀な経験者の採用が困難な状況は、今後も続くと予想されます。これからのBtoB企業には、経験者採用だけに固執するのではなく、ポテンシャルのある未経験者を発掘・育成する視点や、業務委託など多様な働き方を取り入れる柔軟性が求められます。重要なのは、「完璧な人材」を探し続けるのではなく、自社の現状を正しく認識し、現実的な戦略を立てることです。
本記事で紹介した内容を参考に、ぜひ自社に合った採用・育成戦略を見直し、強いマーケティング組織の構築を目指してください。